海外FXで利益が出た場合、税金を支払わなければならないのか気になっている方もいらっしゃるでしょう。
実際に
「確定申告をしないといけない?」
「どれくらいの税金を払う必要があるの?」
といった声も多く挙がっています。
そこで今回は海外FX業者で取引した際の損益にかかる税金や確定申告の方法などについて詳しく解説していきましょう。
この記事を読むことで、海外FXの税金の仕組みや、メリット・デメリットなどを知り、適切なトレードができるようになるので、ぜひ参考にしてください。
日本に住んでいる限りは納税&確定申告は必ずしなければならない
自営業者やトレーダーにとって確定申告は馴染みのあるものでしょう。
しかしサラリーマンは、年末調整は知っていても、確定申告については詳しくないという人が多いのも事実です。
確定申告は給与所得以外の収入がある人が必ず行わなくてはならず、海外FX業者で利益を得ていても例外ではありません。
日本に住んでいる以上は絶対に納税・確定申告を行わなくてはならない、と覚えておきましょう。
海外FX業者と国内FX業者における税制の違い
海外FXは国内FXと税制が異なるため注意しなくてはなりません。
まずはそれぞれの税制の違いについて詳しくみていきましょう。
海外FXは利益が大きいほど税金も多く、国内FXは一律20%
海外FXと国内FXの税制に関する違いをまとめると次の表のようになります。
項目 | 海外FX | 国内FX |
---|---|---|
確定申告が必要になる所得額 |
給与所得者:年間20万円以上 非給与所得者:年間38万円以上 |
給与所得者:年間20万円以上 非給与所得者:年間38万円以上 |
所得区分 | 雑所得 | 雑所得 |
税制度 | 総合課税 | 申告分離課税 |
税率 | 累進課税 | 一律20.315% |
経費申告 | ◯ | ◯ |
損益通算 |
◯ (総合課税の雑所得同士であれば) |
◯ (申告分離課税の雑所得同士であれば) |
損失繰越(損失控除) | × |
◯ (3年間) |
国内FXの場合、税率は「一律20%」ですが、海外FXは「累進課税」となっています。
※正確には2037年まで復興特別所得税が加算され20.315%
累進課税を簡単に説明すると、所得が増えるほど税率が増していく制度のこと。
税率5%~45%の7段階に区分されていて、海外FXで多くの利益を上げるほど、よりたくさん納税しなくてはなりません。
所得額に対する税率をまとめると次の表のとおりです。
参照:国税庁の累進課税
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
また損失通算・繰越の可否も大きな違いの1つとなります。
損失通算・繰越の詳細は後述するので、そちらを参考にしてください。
海外FXの税制におけるメリット
税制の面から見た海外FXのメリットには次の3つが挙げられます。
- 年間利益が330万円以下なら税率10%以内
- キャンペーン等でもらえるボーナス分は課税対象外
- 経費計上が認められる
それぞれの内容をチェックしてみましょう。
年間利益が330万円以下なら税率10%以内で済む。※国内FXは一律20%
国内FXはいくら利益が生じても、一律で20%の税率が課せられます。
一方の海外FXは、上記した「国税庁の累進課税」の表のとおり、330万円以下なら税率は10%以内となっているため、年間利益が少ない場合は税金の負担が軽くなります。
330万超~695万円以下で税率20%が適用されるため、この帯域で国内FXと同等。
695万円超から海外FXの税率が高くなっていくことになります。
お小遣い稼ぎ程度に少額トレードをしようと考えている方は考慮したいメリットといえるでしょう。
キャンペーン等でもらえるボーナス分は課税対象外
海外FX業者の中には豊富なキャンペーンを打ち出していて、ボーナスなどがもらえるチャンスがあります。
例えば次の2つ。
- 口座開設ボーナス
- 入金ボーナス
これらのキャンペーンでもらえるボーナス分は課税対象外となり、大きなメリットとなります。
原則としてこれらのボーナスを直接出金することはできません。
しかしトレードの種銭として使うことができ、利益が出ればボーナス分だけお得になっていきます。
つまり実質キャンペーンでお金を稼いでいることになるのですが、課税対象外なので安心です。
経費計上が認められる
節税対策で「経費計上」はとても大事な要素です。
経費計上は海外FXでトレードするにあたって必要となった費用のこと。
経費計上を行うことで、所得から必要経費を差し引き、残った金額に対して課税額が課せられるようになるので、節税効果が見込めます。
例えば、FXで収益が100万円あり、必要経費に10万円かかっていたなら、残った90万円が課税対象となる…といった具合です。
※実際は所得額に対して控除が受けられますが、分かりやすいよう簡略化して紹介しています。
経費計上を行うか否かで納税額に違いが出てくるため、必ず行うようにしましょう。
詳細は後述する「考えられうる限りの必要経費を計上する」を参考にしてください。
海外FXの税制におけるデメリット
海外FXはメリットばかりではなく、デメリットも存在しています。
考えられるデメリットは次の3つです。
- 累進課税なので利益額が増えれば税金も増える
- 日本国内居住者は国内の税制ルールが適用される
- 損益通算・損失の繰り返しはできないため節税に不利
これらのデメリットは「知らなかった」では通用しません。
それでは1つずつ詳細をみていきましょう。
累進課税なので利益額が増えれば税金も増える
海外FXの税制は「累進課税」となります。
上記した「国税庁の累進課税」のとおり、利益額が増えるほど税率が高くなっていき、納税額が高額になっていくのは大きなネックといえるでしょう。
少額トレードしか行わない副業トレーダーにとってはさほど大きなデメリットではないことも考えられます。
しかし本業トレーダーにとっては税金の負担が大きく膨らむ可能性が高く、十分に留意する必要があるでしょう。
日本国内居住者は海外FXでも国内の税制ルールが適用される
海外FXでトレードしていれば、業者が拠点としている国の税制ルールが適用されそうなものです。
しかし実際には、日本国内に居住しているトレーダーは日本の税制ルールに則って納税しなくてはなりません。
「この国は税率がお得だから、この海外FX業者を選ぼう!」といった方法は通用しないので注意してください。
損益通算・損失の繰り返しはできないため節税に不利
国内FX業者を利用している場合、損益繰越が最大3年間可能となります。
例えば…
2017年:-300万円
2018年:+50万円(通算-250万円)
2019年:+200万円(通算-50万円)
だとします。
損益繰越を行えば、各年に損失があると見なされ、繰越控除を受けることが可能に。
これで2018年、2019年は利益が出ているにも関わらず、税金の支払いを最大3年間まで回避できます。
しかし海外FXは損益繰越の利用ができません。
毎年1月初め~12月末で損益が確定し、その都度課税されます。
長期的なトレードを行うと、最初は損失が出て、次第に利益が増えていくケースはよくあります。
損益繰越の有無で節税効果に大きな差が生まれ、海外FXはこの点で不利です。
損益を確定した段階で課税される
海外FXで課税されるタイミングは「損益が確定した段階」となります。
具体的にはその年の1月初めから12月末までの損益が対象。
これは国内FX業者と同様です。
しかし上記した「損益通算・損失の繰り返しはできないため節税に不利」のように、海外FXは損失繰越を行えないため、節税対策を行えません。
海外FXにおける5つの節税方法
ここまでに紹介してきたように、海外FXは損失繰越ができないため節税効果が低いのがネックです。
しかしこれから紹介する5つの節税方法を実践することで負担を軽減できます。
海外FXを行う際はぜひ実践してみてください。
1. 考えられうる限りの必要経費を計上する
必要経費として計上することで節税効果が見込めます。
例えば…
利益:100万円
必要経費:10万円
だとすると、純利益は90万円。
必要経費を計上しなければ100万円が課税対象となってしまいますが、行えば90万円に抑えられる、というわけです。
◆必要経費として認められるモノ
- トレードで使用するソフトやアプリ代(自動売買プログラムなども含む)
- 書籍やセミナー代
- セミナーの交通費
◆一部必要経費として認められるモノ
- PCやスマホ、タブレットなどトレードに使う端末代
- PC周りの機材(マウス、キーボード、モニター、机、椅子など)
- VPS(バーチャルプライベートサーバー)
- 電気代、プロバイダ代、家賃など
上記3つの費用はFXで使用する割合によって申告する経費が変わります。
仮に8割くらいをFXに使用しているなら、PC代の8割を経費計上する、といった具合です。
申告の際に領収書が必要になることがあるので、FXに関するレシートは全て保管しておくように心がけましょう。
経費計上に関する細かい点については、最寄りの税務署で相談することをおすすめします。
2. 他の収入があれば可能な限り損益通算をする
海外FX以外で収入がある場合、損益通算を行うことで節税効果が見込めます。
海外FXは「雑所得の総合課税」に分類されているため、同じ分類同士の利益と損失を相殺することが可能。
海外FXと損益通算できる対象所得には次の5つがあります。
- 複数の海外FX(例:XMとAxioryなど)
- 国内、海外を問わず、バイナリーオプション取引
- 仮想通貨取引(ビットコインなど)
- アフィリエイト収入
- ネット転売
これらをケースに当てはめて考えてみましょう。
- XM:+100万円
- Axiory:-50万円
- バイナリーオプション:+30万円
- 仮想通貨:-10万円
- アフィリエイト収入:+15万円
- ネット転売:-5万円
- 合計:+80万円
このケースの場合は損益通算により80万円の利益が課税対象となります。
ただし国内FXは海外FXはと損益通算できません。
国内FXの税区分は「雑所得・申告分離課税」にカテゴライズされているからです。
注意しておきましょう。
3. 社会保険料や医療費を控除する
所得控除を漏れなく申告すれば大きな節税効果が見込めます。
所得控除は一定の要件に当てはまる場合、所得の合計金額から一定額を差し引くことができる制度のこと。
ざっくりと説明すれば「(所得-経費-所得控除)×税率」で納税額を計算できるため、控除額が大きいほど納税額を節約できる、というわけです。
一定の要件を満たしていないと適用されないので、誰にでも適用されるわけではありませんが、自身に当てはまるものがないかチェックしてみてください。
所得控除の種類は次の11種類。
- 配偶者控除
- 扶養控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除(健康保険、国民年金、厚生年金など)
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険控除(生命保険、介護医療保険、個人年金保険など)
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 寡婦(寡夫)控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
1つでも要件の漏れがないかチェックしましょう。
4. ふるさと納税やiDeCo等の控除制度を活用する
社会保険料や配偶者控除といった有名な控除以外に、ふるさと納税、iDeCoも控除の対象となります。
それぞれを簡単に説明すると次のとおりです。
- ふるさと納税
応援したい地方自治体に寄附すると、所得税や住民税の還付・控除が受けられる制度。
また納税額に応じた返礼品をもらえます。
- iDeCo(個人確定拠出年金)
毎月一定額を積み立て、金融商品を運用することで老後資金を作る制度。
ただし60歳になるまで運用資産を引き出すことができないので注意しましょう。
将来と蓄え+節税のダブルで嬉しい効果が見込めます。
5. 年明け後に利確する
海外FXは12月末に利益が確定する性質を利用すれば節税効果が見込めるケースがあります。
税金を少しでも減らしたいなら、年明けまで待ってから利確することで、その分の税金を減らすことが可能。
上記した「損益通算・損失の繰り返しはできないため節税に不利」で説明したように、海外FXは損益繰越ができないため、基本的に利益が出ているときに活用したいテクニックです。
税金額の計算手順
ここまでに紹介した内容を考慮した上で、海外FXの税金額の計算手順をみていきましょう。
計算は次の4ステップで行います。
- すべての収入を計算する
- 必要経費を差し引く
- 控除額を差し引く
- 総合課税の税率で納税額を計算する
実例をまじえて、詳しくみていきましょう。
1. すべての収入を計算する
海外FXと同じ税区分である「総合課税・雑所得」の収益を全て合計します。
例
海外FX:+200万円
バイナリーオプション:+50万円
仮想通貨取引:+50万円
合計:+300万円
2. 必要経費を差し引く
海外FXを行うにあたって必要となった経費を差し引きます。
例
FX参考書:1万円
セミナー参加費用:9万円
合計:10万円
収益が300万円だったので、必要経費10万円を差し引いて、残り290万円となりました。
3. 控除額を差し引く
損益通算した金額から必要経費を差し引き、そこからさらに控除額を差し引きます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
例
290万円の所得に対する控除額は9万7,500円となります。
4. 総合課税の税率で納税額を計算する
海外FXの税金の計算式は次のとおりです。
(利益-経費×税率)-控除額=納税額
例に当てはめると…
(300万-10万×10%)-9万7,500円=19万2,500円
これが海外FXにかかる所得税となります。
また厳密には「住民税」も合わせて納税しなくてはなりません。
住民税の計算式は「(合計額-経費)×10%」なので、例に当てはめると29万円になります。
つまり合計納税額は19万2,500円+29万円=38万2,500円です。
確定申告の手順
海外FXの納税には確定申告を行う必要があります。
確定申告の手順は次の3ステップです。
- 確定申告が必要かどうかを調べる
- 白色申告・青色申告かを決める
- 確定申告書を作成する
それでは詳しい内容をみていきましょう。
1. 確定申告が必要かどうかを調べる
確定申告は一定額以上の稼ぎがある人のみ行えば良いので、必ずしも全員が行う必要はありません。
確定申告が必要な人は次に当てはまる場合となります。
給与所得者(サラリーマンなど給料がある人):年間利益20万円以上
非給与取得者(自営業者、フリーランス、専業主婦など):年間利益38万円以上
例えばサラリーマンをしながら、副業で海外FXを利用し、年間20万円以上の利益を上げている人は確定申告が必要となります。
2. 白色申告・青色申告かを決める
確定申告には次の2種類があります。
- 白色申告
- 青色申告
各確定申告の詳細をみてみましょう。
白色申告とは
白色申告は簡易式の確定申告で、事業を始めたばかりの人や、さほど所得が多くない人が主に利用します。
簡単な帳簿つけだけで申請することができ、事前申請が不要な手軽さが魅力です。
海外FXの確定申告を行う際は、ほとんどの人がこの白色申告を選択することになります。
すでに事業を営んでいる人や、フリーランスとして活躍している人は次に紹介する青色申告も候補となりうるでしょう。
青色申告とは
青色申告は税務署に事前に申告承認申請書を届け出し、承認を得なくてはなりません。
また白色申告以上に詳細な帳簿付けが必要。
手間はかかりますが、その分だけ節税効果が高いのが魅力で、10万円控除と65万円控除の2種類があります。
現状では海外FXのみの取引で青色申告の申請が通るのは稀なため、他事業などを営んでいる人以外は候補とならないでしょう。
3. 確定申告書を作成する
税務署または確定申告会場に出向いて、確定申告書の作成を行いましょう。
手順は次の8ステップです。
これで確定申告の作成・提出が完了します。
入力項目など分からない点があれば、作成会場にいるスタッフと相談しながら作業を進めていけるので、心配しなくても大丈夫です。
またマイナンバーカードとICカードリーダーを持っていれば、自宅のPCから「e-Tax」を使って、ネット上で確定申告を行うこともできます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は海外FXにかかる税金や税制の仕組み、節税方法などを紹介しました。
最後にもう一度おさらいすると…
- 海外FXは利益が多いほど納税額が増える(税率5%~45%)
- 国内FXとは異なり、損失繰越ができない
- 経費計上が認められるので、必要経費の計上をしっかりと行って節税する
の3つが挙げられます。
「海外FXだとどんなふうに税金を納めるのだろう?」
「上手く節税することはできないかな?」
そんな方は、ぜひこの記事を参考に、損をしない確定申告を目指してくださいね。